オス犬の生殖器と生殖器の病気
以前からいつか書こうと思っていた「去勢・不妊」の話。
・・・をしようと思ったのですが、その前に生殖器がどういう働きをしているのかを理解しておいた方がいいと思い、普段タマをこよなく愛するタマラーとして今日は真面目にタマの話をしたいと思います。
(メスの話はまた改めてしますので、女の子の飼い主さんは少々お待ちを。)
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<オス犬の生殖器>

●陰嚢(精巣と精巣上体)
いわゆる「タマ袋」で、左右に精巣(睾丸)がひとつずつ入っています。陰嚢は睾丸を包んで保護します。
タマを触れば体温より冷たいことがわかると思いますが、陰嚢は腹腔より温度が2~3度低くなっていて精巣を冷やす役割を果たしています。精子は熱に弱く、低い温度でないと作ることができないためです。
●精巣(睾丸)と精巣上体
精巣では精子が作られ、男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が行われています。出来上がった精子は精巣上体で成熟し、精管に送られます。精巣上体は精子を蓄えておくと同時に余分な精子の吸収する働きがあります。
犬の性成熟期は6ヶ月から1歳で、それ以降に精子が作られるようになります。性成熟期は人間で言えば中学生ぐらい、と言えばわかりやすいと思いますが、「子供を作れる体」になり、だんだんと異性を気にするようになりオス犬は縄張りを意識するようになってきます。ただし、精神的な成熟を迎えて「オトナ」になるのはだいたい2歳ぐらいになってからです。
●前立腺 (図の黄色部分)
前立腺液(精漿)を作ります。前立腺液は乳白色の液体で、精子と合わさって精液となります。また、精子の栄養になり精子を保護する役割もあります。
ヒトの場合は前立腺のほかに精嚢、尿道球腺(クーパー腺)が副生殖腺としてあり、これらの腺から液体が分泌されて精子とともに精液となりますが、犬の副生殖腺は前立腺だけです。
前立腺は精液を尿道を勢いよく押し出す働きもあります。
●陰茎
犬の陰茎には陰茎骨があり(ヒトにはありません)、充分に勃起していない状態でも雌犬の膣内に挿入することができるようになっています。
●亀頭球
陰茎の根元にあり、海綿体がとても発達しています。交尾のときに膣腔内でボール状に膨らみ、外れないように「ロック」させる働きがあります。そのため犬は長時間の交尾が可能で、1回の交尾で2~3回射精します。
交尾中でなくとも、マウンティングなどにより興奮しているときにも亀頭球が膨らみます。(タマタマが4つあるように見えます。)興奮しすぎて赤ティンコが「こんにちは」して亀頭球まで出てしまうと、なかなか中に収まらなくなってしまうのでご注意を!
<オス犬の生殖器の病気>
●前立腺肥大
前立腺は男性ホルモン(特にテストステロン)の作用で活性化されます。年を取るとそのテストステロンの分泌が過剰になり、ホルモンのバランスが崩れて前立腺の細胞が増殖して肥大します。この肥大は単純に細胞の数が増えて大きくなるだけの過形成(良性)であり、腫瘍や膿瘍による肥大とは別物。
ヒトの場合は尿道を圧迫するので尿が出にくくなる排尿障害がありますが、犬の場合は前立腺の上にある直腸を圧迫するので便秘がちになったり、排便時に痛がったり、ころころと短いウンチになったりします。未去勢の高齢オス犬にこのような排便障害が見られたら前立腺肥大が考えられますので、病院で診てもらってくださいね。
人間もそうですが、犬でも高齢になるとかなりの確率で前立腺肥大が起きます。精巣からのホルモン分泌過剰が原因なので、去勢をして精巣を取ることにより予防ができます。
●前立腺嚢胞
前立腺が肥大して膨張すると、前立腺の中に嚢胞(穴)ができます。その嚢胞内に前立腺液や血・膿がたまってますます膨らんで巨大化していきます。嚢胞が大きくなるとウンチが出にくくなって便秘がちになり、血尿や膿の混じった白っぽい尿が出たりします。
●前立腺腫瘍
ヒトに比べると犬には前立腺腫瘍の発生率は少ないですが、前立腺に腫瘍ができればほとんどの場合は悪性腫瘍なのだそうです。精巣のホルモンが関与していると考えられていますが、正確な原因ははっきりしていません。
●前立腺炎・前立腺膿瘍
尿道などを経由して外部から細菌感染し、炎症を起こすのが前立腺炎です。炎症部分が化膿すると前立腺膿瘍になります。血尿や膿の混じった白っぽい尿が出たりします。細菌感染が原因で、ホルモンとは関係がないため、去勢済みの犬や若い犬でもなりえます。
●停留精巣と精巣腫瘍
犬の精巣は母犬の胎内にいるときは腎臓の近くにあり、生後6週ごろまでには陰嚢内に下りてきます。陰嚢に下りてくる時期は個体差がありますが、生後6ヶ月ごろまでに陰嚢内に下りてこなければ停留精巣となります。
二つとも下りてこない場合とひとつだけ下りてこない場合とがあり、止まる場所も前立腺のところ、腎臓と前立腺の間、前立腺から鼠頚部の皮下とさまざまです。
精子は低温でないと作られないため、精巣が暖かい腹腔内にある停留精巣では精子は形成されません。片方だけ下りている場合は繁殖能力はありますが、停留精巣は遺伝するので繁殖はやめるべきです。
精巣が暖かい体内にとどまっていると、精巣腫瘍の発生率が高くなります。精巣腫瘍は一般的に良性ですが、一部は悪性腫瘍で転移するものもあるため、早い時期に摘出手術(去勢手術)をした方がいいです。
●会陰ヘルニア
会陰部(肛門周辺)から主に直腸などが飛び出してしまうヘルニア。老化現象や遺伝的要素により、会陰部の筋肉が緩むことで発生します。生殖器の病気ではありませんが、男性ホルモンのアンバランスも原因のひとつと考えられています。(高齢の未去勢のオスに発生率が高いため。)
以上のことを踏まえて、次回去勢手術についての私の考えを述べたいと思います。
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●参考資料
*愛玩動物飼養管理士1級・2級教本
*動物看護のための小動物生理学 (岡哲郎著 ファームプレス)
*イラストでみる犬の病気
(小野憲一郎、今井壯一、多川政弘、安川明男、後藤直彰編集 講談社)
*犬の病気がわかる本 (玉川清司監修 出版社)
*楽しい解剖学 (佐々木文彦著 学窓社)
*知ってなおす犬の病気 (川口國雄著 誠文堂新光社)
*図解からだのしくみ大全 (伊藤善也監修 永岡書店)
*ペットの自然療法辞典
(バーバラ・フジェール著 山根義久監修 ガイアブックス)
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