犬を殺すのは誰か
だいぶ前の話なんですが、夕方のニュースで仔犬や仔猫のネット販売でトラブルが続出している、という特集をやっていました。
そのときにやっていたのは、「仔猫を買ったら、2ヶ月だと聞いていたのにもうすでに成猫で、しかもお腹に子供がいた」「病気はないと言っていたのに、重篤な症状があってすぐに亡くなってしまった」というようなトラブルでした。
それに対する業者の言い分は「手違いで違う猫を送ってしまった」「うちにいたときは病気はなかったので、搬送の過程で病気になってしまったのでは?」というようなものでした。
亡くなった猫の飼い主がインタビューに答えて「けしからん!大損害だ!」というようなことを言って怒っていたんですが、正直全く同情できませんでした。(飼い主には。)
業者に会って人となりを確かめることもなく、実際に仔犬や仔猫に会うこともなく、健康状態を確認もせずに、ネットでモノのように命の売買をする気持ちが私にはどうしても理解できません。
そんな詐欺まがいの金儲け主義の業者の犬や猫(仔犬・仔猫・親犬・親猫)たちが、どのような環境で過ごしているのか、想像に難くありません。
それでもそのような問題のある業者が仔犬・仔猫の販売を生業にできるのは、そうやって簡単に買う人間がいるからです。金銭のやり取りだけを考えればその飼い主は「被害者」なのかもしれませんが、一方でそのような問題業者を生む「加害者」であり、本当の「被害者」はそのような状況で売買される犬やネコです。
先日、ずっと気になっていた本を読みました。
![]() | 犬を殺すのは誰か ペット流通の闇 (2010/09/17) 太田 匡彦 商品詳細を見る |
アエラの記者である著者が2年にわたって取材した記録をまとめたもので、巻末には全国106の自治体からの犬の引き取りや取り組みなどに関するアンケートの回答をまとめたもの、主要自治体の「捨てられた犬の種類」のデータも掲載されています。
ただ単に殺処分される動物を取り上げるのではなく、「蛇口」である犬の流通のしくみに迫っています。なぜなら、保険所に持ち込まれ殺される犬や猫は、無責任な飼い主によるものだけではなく、業者によるものも少なくないからです。
お涙ちょうだいの感情に訴えるものではなく、取材で明らかになった『事実』が淡々と綴られており、それゆえ余計に読み進めていくうちに心臓が雑巾しぼりされたようにぎゅぅぅぅぅっとなります。
ただ、悪いことばかりではなく、この問題に真剣に取り組もうとしている人たち(ペット業界の人間も含め)がいるということがこの本で分かったことは救いでした。
悪徳ブリーダーや業者を取り締まるために、本年度2011年に動物愛護法が改正されますが、法律を改正するだけで不幸になる動物がいなくなるとは思えません。詐欺罪があっても詐欺をする人間はいるし、死刑があっても殺人はなくなりません。
悪徳業者をなくすためには、「簡単に儲かる仕組み」を変える必要があるし、それができるのは法律ではなく、私たち『買う側の人間』です。
不幸になる動物をなくすためには、まずは辛い現実に目を背けずに事実を知ること、これが大切な第一歩ではないでしょうか。
ガラスケースに入れて売られている2ヶ月にも満たない犬や猫たちが、どのような経緯でそこにいるのか、その先には何があるのか、大切なことを教えてくれるとても貴重な本でした。
最後に、その本に書かれている締めくくりの言葉をご紹介します。
筆者が一連の取材を通して出会ってきた犬たちの多くは、もうこの世にはいない。流通・小売業者によって幼くして親犬から引き離され、無責任な飼い主に買われ、そして捨てられた。その最後は、ほとんどの場合、冷たい箱のなかでの窒息死だった。業者によって自治体に持ち込まれた犬たちは、短い一生を狭く、そして時に不潔なケージのなかだけですごし、殺処分されていった。
私たち人間の取り組みが一日遅れれば、その一日で数百匹の犬の命が無為に失われる。こんな理不尽なことを続けていていいはずがない。犬たちの声なき声を拾えるのは、やはり人間なのだ。
(緑色部分は犬を殺すのは誰か ペット流通の闇より引用)
少しでも多くの人が日本のペット流通の事実を知り、飼い主全体の意識が高められることを願ってやみません。
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事実を知ることから始めてみませんか?


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